ろきしの折り紙倉庫

主にオリジナルの折り紙の創作過程について書きます。

折り紙作品 猫

創作: 2024/4

猫は長年創作したいと思っていた題材です。ちょっと試作してみて諦めてを繰り返していましたが、ようやく形になりました。

創作過程

猫を折る上で、顔のパーツを省略しない作品を目指すと、下の図の黄色で囲った部分(マズル)をどう表現するかが問題になります。

マズルを細かく描写している作品は、以下のようなものがあります。

勝田恭平さんのペルシャ

katsuta-origami.com

満田茂さんのにゃんこ

taigaさんのねこ2021

Vistarさんのラグドール

J.W Parkさんの猫

かのこやさんのメインクーン

いずれも、マズルを独自の方法で折り出していることが分かります。

そこで、まずはオリジナルのマズルの折り方を考案することを目指しました。

そこから試行錯誤を繰り返したうちの一つです。もはや何の動物だか分かりませんが…

このように、紙のフチから猫のウィスカーパッド(ひげ袋)っぽい形をつくっています。しかし、このままでは謎の動物の顔しか作れません。

そこで、このように反対側にも紙を足してみます。

試行錯誤の結果、それっぽい形を作ることができました。

正方形の紙に組み込んでみます。

こんな感じです。

次は耳をどう作るかを考えます。

67.5°の耳を作りました。それと同時に、顔から伸びるヒダの向きを変えました。元々紙のフチに平行な方向だったのが、対角線(対称軸)に平行な方向になりました。

対称軸に平行なヒダは、動物の後ろ足を折るときに役立つことが多いです。例として、小松英夫さんの狐があります。

折り紙計画 - 狐

ポーズを座った姿に決めて、とりあえず体を作ってみます。

紙のカドから前足を折り出し、対称軸に平行なヒダを分散させて後半身を作りました。

今回もインドサイのときと同じように、背割れ・腹割れハイブリッドのような形です。前半身は紙のフチが背中側に来る背割れ構造、後半身は紙のフチが腹側に来る腹割れ構造です。

rokishi-origami.hatenablog.com

全体の構成は、涂开明さんの猫の影響を受けています。

# 6 cat by Tukaiming booklet ,Paperback – SAOC ORIGAMI

この試作を基に、オリヒメ上でブラッシュアップしていきます。

まずは、22.5°系として明快な構造にするために、図で示した幅を揃えます。元々黒線だったのが、赤線のようになります。

次に、腰の位置を後ろにずらして胴体を長くします。新たに青い線のように描き変えます。

さらに、後半身を増強するために水色の線のように領域を追加します。

どれくらいの幅で追加するかは勘で決めています。うまくいくかは実際に折ってみないと分かりません。

このような作図が簡単にできるのが、オリヒメおよびOrieditaの大きな利点です。

ここまで作図したら、作図した折り線を実際に紙に写しとって試作していきます。大きな面積の領域を追加したので、後半身は大幅に作り替えます。

後ろ足のつま先の折り出しで苦戦しましたが、無事まとまりました。最終的な展開図とほとんど同じです。

表裏同色の紙で折るつもりでしたが、猫の柄っぽく色分けできそうなことに気づきました。

ここからは細かい部分を調整していきます。

つま先のところにある細いヒダが気になるので、オリヒメ上でヒダの有無を検討します。

左は元々の展開図、右はヒダを切り取った展開図です。元々のほうがつま先が尖っていなくて造形的によい上に、比率がシンプルになりそうなので、元々の方を採用します。

他にも、胸の仕上げ方などを検討しました。

完成です!

展開図折りをしたい方は、こちらをご覧ください。↓

rokishi-origami.hatenablog.com

振り返り

猫の折り紙は複雑系でもデフォルメされたデザインのものが多く、各創作家の個性が見られて面白いです。それに対して、本作は比較的リアルにまとまりました。その点では結構珍しい作品だと思います。

ウィスカーパッドはうまく表現できたと思いますが、目が若干左右に離れすぎていることと、鼻筋の立体感がないことが気になります。

猫の顔の凹凸はかなり複雑で折り紙での再現が難しいので、既存の作品の多くは正面顔か横顔のどちらかに重点を置いていると思います。本作は正面顔、横顔の両方がそこそこという感じです。正面から見ると胸の立体感がないので、斜め前から見るのが一番見栄えがします。

顔の凹凸まで完璧な作品としては、豊村高志さんのねこまたボブテイルが知られています。

第13回JOAS創作折り紙コンテスト結果発表 - 折紙探偵団