ろきしの折り紙倉庫

主にオリジナルの折り紙の創作過程について書きます。

折り紙作品 狛犬

創作: 2023/8

紙: レザック66 しろねず 70×70 cm (台座は別)

眉毛がポイントです。

 

以下は2023年の工大祭の部誌に書いた内容と被ります。部誌のほうが詳しめに書いてあります。

2023年の上半期は、研究が大変でほとんど折り紙をしていませんでした。折紙探偵団の東京コンベンションに参加してモチベーションがあがったので、久々に何か作りたいと思って創作を始めました。

余談ですが卒論には上半期の実験内容を1ミリも使いませんでした…

コンベンションのコンテストの龍を見て、日本的なものを作りたいと思い、題材として狛犬を選びました。

jaoさんの龍の表情がとてもよかったので、こんな感じに作りこめたらいいなと思っていました。他には、北條高史折り紙作品集掲載の、金剛力士像の顔のデザインにも憧れがありました。

おりがみはうす - 北條高史折り紙作品集

まずは例によってオリヒメでカド配置を考えていきます。狛犬はたてがみに紙の面積を割きたいですが、ブック型(正方形の一辺の垂直二等分線を対象軸とする構造)でもダイヤ型(正方形の対角線を対象軸とする構造)でもどちらでも行けそうです。ブック型なら蛇腹(下図の左)、ダイヤ型なら22.5度系(下図の右)かなという感じです。

正直どっちでもよかったのですが、独自性を出しやすい気がする22.5度系の方を選びました。


前足を内部カドにしたのは、たてがみに辺カドを使うためですが、コンベンションの講習で折ったJ. W Parkさんのアイベックスの影響も受けています。

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前足が内部カドかつ、たてがみや顔の造形には辺カドが必須であることから、当然背割れ構造です。

実際に紙を折って試作していきます。たてがみの折り出し方等は一切考えていなかったので、体側から考えていきます。

まず前足を地面に突き立てるポーズをイメージし、前足が体に対して構造的に下方向に向く折り方を探しました。前足は内部カドで、分厚く扱いづらいので、最初から下を向くようにしておかないと後で大変です。

その後、たてがみは首周りと前足周りで別々に折り出すことを思いつきました。そのまま流れで頭も適当にカドを出してまとめました。

たてがみの折り方は、Kim folderさんのミノカサゴヒレの折り方を参考にしています。

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この時点でいい感じだったので、推敲していきます。

狛犬の写真を見ながら、主に顔を直していきます。吊り上がった唇と眉毛がデザイン上特に重要な気がします。

もう完成でいいかなという感じになったので、レザックで本折りします。

完成です!

実はわりとスムーズに完成した作品でした。筆者の場合は、創作にかかる時間と作品の完成度は比例しない気がします。うまくいかないときはいくら頑張ってもうまくいかないのが折り紙創作のつらいところです。

展開図の基準点が明快で、構造的にも完成形の見た目より折りやすいと思うので、展開図折りにおすすめです。展開図は後ろ足のみ左右で2段階を表示しています。

kalさんの立ち上げた 「Folder's Lab」 内の企画「折り紙を見る眼」にて、本作をたけたけさん、すけさん、Kaitoさんにレビューしていただきました。作品紹介資料、レビュー資料もダウンロードできるので、よかったら見てみてください。↓

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せっかくなので少し品評会を振り返ってみます。

一般的にイメージされる狛犬のデザインは、岡崎現代型と呼ばれているそうです。

狛犬分類学 8 備前・岡崎現代型・尾道・佐渡・その他

本作のたてがみは、カールが足りず岡崎現代型に全然似ていません。これは筆者も自覚があり、Kaitoさんに指摘されました。逆にたけたけさんからは、狛犬は彫刻で作りやすい=彫刻ならではのデザインになっているのだから、折り紙で作りやすい=折り紙ならではのデザインの狛犬があってもよい的な意見をいただきました。これは筆者には無かった発想で驚きました。

後半身がペラペラで、デザインもたてがみに比べてシンプルすぎるという指摘は全員からあり、すけさんには後半身に領域付加した試作までしていただきました。領域付加で紙の効率と折りやすさはかなり落ちることが予想されますが、そのうち自分でも取り組みたいと思っています。いつになるかは分かりませんが…

もしいつか折り図を描くなら、折りやすい今のバージョンのままでいいかなと思っています。