ろきしの折り紙倉庫

主にオリジナルの折り紙の創作過程について書きます。

折り紙作品 ゴールデンレトリバー

創作:2025/3

紙:里紙 (びわ) 55×55cm

自分らしい造形の作品になったと思います。

ゴールデンレトリバーの折り紙で代表的なものは、Park Jong Wooさん、神谷哲史さん、かのこやさんあたりでしょうか。

 

www.instagram.com

 

www.instagram.com

おりがみはうす - 神谷哲史作品集2

改めてこれらの作品を見ると、ゴールデンレトリバーという特定の犬種でも体型や顔のデザインでここまで各作家の個性がでるというのは少し驚きです。

これらの作品にはない要素として、過去作の狛犬と似たような、ヒダを使った豪勢な毛の表現を取り入れるということを思いつきました。狛犬では下の図のように前足を内部カドにすることで、紙のフチをたてがみの表現に用いました。

rokishi-origami.hatenablog.com

前足を内部カドにする利点としては、以下のような点があります。

  • 紙のフチを毛の表現などに活用できる→もふもふの犬に適する
  • 紙の内部領域の無駄が少ない
  • 前足が分厚くなるので、完成作品がしっかりとした印象になる

前足を内部カドにして犬のもふもふ感を表現している作品は、自分の知っている範囲では勝田恭平さんの「ポメラニアン」、かのこやさんの「パピヨン」があります。表現方法にはお二方の個性が出ており、ポメラニアンでは胸に大きな面を用意すると同時に、背中を立体的に表現しています。パピヨンでは肩周辺の長い毛並みに紙を割り当てています。

katsuta-origami.com

 

www.instagram.com

これらを踏まえ、まずはいつものようにorieditaでカド配置を考えていきます。

いくつか考えてみたうち、最もシンプルなものを試しに折ってみました。

肩の部分に狛犬と似たような毛の表現をしてみましたが、紙が少なく貧弱な感じがします。後半身は紙の効率とシルエットを重視して、腹割れ構造にしました。紙の裏面が出てしまいますが、気にしないことにします。

全体のバランスは良いですが、結果として袋井さんのダルメシアンとほとんど同じ構造になってしまいました…

 

www.instagram.com

しかしこの構造でまとまりが良いので、別の部分でオリジナリティは出せるだろうと考えてこのまま進めていきます。

肩の毛並みの表現を、首から肩まで一続きの紙でまとめて覆うような表現に変更してみました。ついでに後ろ脚も立体的にしました。ゴールデンレトリバーにしては肩回りがゴツすぎる気もしましたが、もふもふの表現としては効果的と考えて採用しました。

この時点で当初のコンセプトである「狛犬と同じような毛の表現」は消滅しましたが、気にせず進めていきます。

ブログを書いているときに気づきましたが、紙の重なり方が何となく小松英夫さんの「ひつじ」っぽいです。無意識に影響されていたのかもしれません。

komatsu.origami.jp

後は顔を考えるのみです。発想としては、前足から出る線を屈折させて耳のカドを鈍角で折り出し、残りの部分で何とかして目鼻を折り出すという感じです。

試行錯誤の末、最終的に採用した顔の造形です。

何度か折り直して推敲し、色々なこだわりを詰め込みました。

実際の完成形とは少し異なりますが、下の絵のようなポリゴン的な造形をイメージして作りました。過去作の「猫」では顔の凹凸をうまく再現できませんでしたが、今回は比較的うまくいきました。

目の造形にもこだわっています。90°の小さいカドを広げてつぶすとまぶたのような表現ができますが、まぶたの向きによって印象が変わります。下の写真は、それぞれ左はまぶたが下にある場合、右はまぶたが上にある場合です。左はなんとなく不気味なのに対して、右は自然な造形で目つきが優しい感じがしたので、右の折り方を採用しました。

 

構造としては袋状の90°の内部カドになっています。過去作の「リス」で使った構造に近いです。袋状になっているので、折り込んでいくと自然と立体的に仕上がります。仕上げの折りを広げて元に戻すと、下の写真のようになります。

基準点のないぐらい折りだらけで再現性は低いです。折る度に口の形が変わります。

左右の耳の付け根を離して額を作るために、下の図のように左右非対称に折り筋をずらすという強引な方法を用いています。下の図の水色の菱形の部分が額になります。平坦条件を満たす正確な作図方法が分からなかったので、下の展開図は大まかな角度で描いています。細かい構造の検証はまた今度やります。

なお本折りでは全て適当なぐらい折りで済ませています。

 

完成です!

本折りの紙は迷いましたが、色数の多い里紙からゴールデンレトリバーっぽい色の紙を選びました。

 

↓こちらはOristの根津の展示会の3日目で展示したバージョンです。紙はフレンチパーチ 45×45cmです。顔の仕上げが最終バージョンと異なります。横顔はもしかするとこちらのほうが良いかもしれませんが、鼻筋を凹ませてしまっているので、上から見たときにあまりゴールデンレトリバーっぽくない気がします。

 

今回は構造的には袋井さんのダルメシアンとダダ被りで新しさはありませんが、造形では立体的な毛並みの表現や顔のデザインで面白さを出せたと思います。私の技量では全く新しい作品というのはまずできないので、これからも色々な要素の組み合わせで新しいことができたらと思います。

折り紙作品 チンパンジー、テングザル

創作年月: 2024/7

紙: チンパンジー…楮紙 20×20cm、テングザル…ヴィンテージゴールド 20×20cm

長山海澄さん監修、国際熱帯木材機関(ITTO)・横浜市立の3つの動物園・Oristがコラボした「折り紙で親しむ熱帯林の動物たち」に、折り図が掲載されます!

www.city.yokohama.lg.jp

折り工程の監修と折り図制作は長山さんに依頼しました。

今回は、以下の点について考慮しながら創作しました。

  • 異なる種類のサルの折り分け
  • 難易度を下げる、工程数を減らす
  • 紙効率 (紙の大きさに対する完成形の大きさ) を上げ、なるべく15cm四方の折り紙用紙で折れるようにする

難易度、工程数、紙効率については、以下のような工夫が考えられます。

  • 細長いカドを出さなくてよいデザインを考える
  • 折り紙用紙のカドを有効活用する
  • 複雑な比率を使わない
  • 伝承基本形を活用する

ただし、紙効率と難易度は、シンプルな作品ではトレードオフになる場合があります。

チンパンジー

胴体が短く手足が長いですが、手足をリアルに折り出そうとすると、多くの領域を消費してしまいます。デフォルメとして腕を長く折り出し、後ろ足を短く折り出すことにします。また、顔の造形が分かりやすいように、正面の姿を折ることにします。

クエンティン・トロリップさんのチンパンジーを参考にして、顔の造形から考え始めました。

おりがみはうす - クエンティン・トロリップ折り紙作品集

他のサルと区別するポイントとして、耳を明確に折り出すことを意識しています。

顔の構造を配置し、正方形のカドを腕に割り当てる構造を考えます。二艘船の基本形を用いて無理なくまとめることができました。

仕上げの工程では、沈め折りや中割り折りを使わなくて済むように工夫しています。長山さんの監修で、唯一避けられないと思っていた沈め折りが無くなり、折りやすくなりました。

かなり平面的なデザインで、自立もしませんが、チンパンジーのデザインとして分かりやすいところに落とし込めたと思います。

折り図の工程数は46工程です。

テングザル

平らで大きな鼻を持っています。また、かなり小顔で四角い顔をしています。顔の表現のために、チンパンジーと同様に正面の姿を折ることにします。

体型もチンパンジーとは大きく異なり、でっぷりした胴体と細長い手足、長めの尻尾を持っています。チンパンジーは後ろ足を短くしてもあまり違和感はありませんでしたが、テングザルの場合は腕と後ろ足を同じくらいの長さで折り出した方がよさそうです。

手足の配置をいくつか試作してみた結果、下のような王道の配置を採用しました。

最初は、この配置では手足が短すぎるのではないか?と考えていましたが、腕を実際のカドよりも細長く見せる方法を思いつき、うまくまとまりました。

こちらは脚を曲げて座らせることで、自立するようにできました。

シンプルながらもいろいろな表現を盛り込めたので、気に入っています。

折り図の工程数は54工程です。

 

シンプル系の創作は、複雑な作品とは考えることが違って面白いです。単純な折りで題材をうまく表現できると、達成感があります。

 

*1

 

*1:

ちなみにテングザルの折り紙は、調べた限りでは銀のむしさん、William Gozaliさんが作っています。

www.youtube.com

wg-origami.blogspot.com

FAVINI TOKYO

今回は、初めて使ってみた紙を紹介します。

イタリアと日本の美的感覚を融合した、ファヴィーニ社(FAVINI)のエンボスペーパーです。
特殊なエンボス技術によって生み出された、深みのあるエンボスが特徴。
日本の都市の現代性から着想し、錆や石、コンクリートなどを思わせる
落ち着いたカラーラインナップを揃えています。

www.takeo.co.jp

竹尾のホームページで見かけて、質感と名前のかっこよさに惹かれて買ってみました。

FAVINI TOKYOは、イタリアの特殊紙メーカーFAVINI S.R.L.と、タントやレザックシリーズなどで有名な特種東海製紙が共同で発売している紙です。2022年に発表された比較的新しい紙です。

https://www.tt-paper.co.jp/app/files/uploads/2022/11/20221121_info.pdf

連量は103kg、301kgで、色は7種類あります。折り紙用としては103kgの方しか使えないと思います。

ライトグレーを購入してみました。

 

きめ細かい均一なエンボスが非常にきれいで、均整の取れた雰囲気があります。よく見ると、凸の部分が明るく、凹の部分が暗く見えます。

連量103kgのものは片面のみ加工があり、裏面はつるつるです。裏面にも模様はありますが、表のエンボスと比べると全然目立たないので、表裏の見た目の違いが分かりやすいです。紙の裏が出る作品を折るときは注意が必要です。

(レザック66も表のみ加工されており裏はつるつるですが、裏の模様もはっきりしているので、ぱっと見では表裏が分かりにくいです。)

折り心地はレザック66(100kg)とほとんど一緒です。レザックで折れる作品ならこの紙でも折れます。エンボスの手触りが紙とは思えないほど圧倒的に良いからか、何となくレザックよりも柔らかい感じがしました。

萩原元さんのゾウ、24×24cm

 

エンボスが非常に均一で人工物っぽいので、動物を生き生きと仕上げるにはあまり向かないかもしれません。

 

拙作の狛犬、55×55cm

糊付けはしてないです。

石っぽさを活かせて悪くないですが、もっと広い面を持つ作品のほうがこの紙には合っているかもしれません。

総じて厚手の紙としては非常に良いと思います。インディゴやラストの色合いがとてもかっこいいので、またの機会に買ってみようと思います。

ちなみに公式ページでも折り紙に使っています。↓

www.favini.com

折り紙作品 カブトムシ2

創作: 2024/8

紙: コズピカ30×30 cm + ホイル紙部分裏打ち

展開図の右半分では、胸の関節のくびれの処理をした後を図示しました。

前作と比べて、折るのが非常に楽です。また、脚が短くなり、体高が増したので、リアルではなくなりましたがより重量感がある仕上がりになりました。触角は省きました。

rokishi-origami.hatenablog.com

 

構造は16等分蛇腹で、おおむね四鶴構造*1です。

四鶴構造はカブトムシでは王道の構造で、Robert J. Langさんのカブトムシが有名です。山田勝久さんの作品群も四鶴だったと思います。

“Samurai Helmet” Beetle, Opus 417

Amazon.co.jp: 1枚のかみでおる おりがみ 世界のカブトムシ・クワガタ : 山田 勝久: 本

ということで今更感はありますが、デザインで個性は出ていると思います。

創作過程については、あまり語れることはありません。下図のパターンをいじってカブトムシを作ろうと思い立ってから構造はすぐ決まったので、仕上げの吟味に時間をかけました。

脚の長さと位置の調整のために、神谷さんのメタリフェルホソアカクワガタの130工程目の処理をパクっています。

 

全体的に、シンプルな構造を活かした仕上がりになっています。具体的には以下の点があります。

  • あまり分厚くならないので、仕上げの自由度が高いです。
    • 鞘羽がペラペラな辺カドになっています。鞘羽を内部カドで折り出した前作
      と異なり、立体感を出すのが簡単です。
    • 前作では体高(胴体の厚み)を構造的に折り出していましたが、今回は雑に内側を膨らませて表現しています。
  • 頭角の先端の枝分かれの折り出しは、手軽な方法を用いています。こういうのは等分数が少ない作品ならではという感じがします。
  • 完成形の見た目が、そこまで蛇腹っぽくない感じになっています。

胸と鞘羽の仕上げのために、本折りの際は下図のブルーグレーの部分にホイル紙を裏からスティックのりで貼り付けました。

 

一応仕上げのヒントを載せておきます。

くびれの処理

頭角

鞘羽

胸角

*1:ハイパーステジアさんの用語辞典

折り紙用語辞典 | hyperesthesia

私の折り紙経歴と、影響を受けた折り紙作家

自己紹介的な意味でまとめておきます。

筆者の折り紙経歴

上から大まかな時系列順で書いています。

小学校
  • 父が川畑文昭さんの新・おりがみランドシリーズからいろいろ折ってくれて、段々自分でも折り出したのが最初だと思う。恐竜のおりがみシリーズのプテラノドン、メトリオリンクスが特に好きだった。
  • 桃谷好英さん、山田勝久さん、高井弘明さんの本にもはまる。


    桃谷さんの三葉機

  • 主に魚の基本形を使って、恐竜っぽいものを作る。一番最初の創作がこの辺り。

  • 前川淳さんの本格折り紙にはまる。
  • 福山ローズを知り、川崎敏和さんの本にはまる。折り紙夢WORLD(花と動物編)のカエルとトカゲを折り、蛇腹技法を知る。
  • 神谷流創作折り紙に挑戦!を知り、カラーページの作品たちに衝撃を受ける。流れでおりがみはうすを知り、神谷哲史作品集、小松英夫作品集、昆虫I、II、空想おりがみにはまる。和紙やカラペ等、折り紙用紙以外の紙を使い始める。ディバインドラゴン、エンシェントドラゴンは小4の冬に初めて完成させたはず。

    初めて折った神谷さんのディバインドラゴン

  • Robert J. Langさんの昆虫IIの高難易度っぷりにはまり、Langさんの洋書にも手を出す。Origami insects and their kinは、今までの折り紙人生の中で特にお気に入りの一冊。

Langさんの飛ぶゴホンヅノカブト、クワガタ

  • LangさんのTEDの講演や、目黒俊之さんのホームページを見て、設計理論を知る。

    www.youtube.com

  • 整数等分などを使った創作に挑戦する。
    当時描いたトンボの折り図を発掘したのでスキャンしてみました。地味に難しいので、物好きな方は折ってみてください笑
    構造、造形共にOrigami insects and their kinに強く影響を受けています。
  • フチモトムネジさんのオリロボにはまり、量産する。オリロボは友達にも布教していた。
  • 展開図折りという概念を知り、挑戦し始める。最初に折ったのはBrian ChanさんのDobsonflyだったと思う。ネットで展開図を漁りだす。

    https://web.mit.edu/chosetec/www/origami/dobsonfly/

  • 東京例会の講習に参加しだす。初めて参加したのは多分この回。 

    2012年 01月 東京友の会例会報告 – 折紙探偵団東京友の会

  • 神谷さんのJOASホール折り紙教室とかにも参加する。初参加はニワトリ。

    https://ameblo.jp/hanako-origami/entry-11451421420.html

中学
高校
  • 勉強や部活が忙しくなり、創作はしなくなる。
  • Shuki KatoさんのOrigami nature studyが発売され、購入する。

    Shukiさんのギガノトサウルス

  • 展開図折りがそこそこ上達する。今井幸太さんの作品を苦労して完成させていた。

    今井さんのセミ

大学
  • Twitterを始める。
  • FITに加入する。なおコロナ
  • Twitterで展開図を漁るようになる。skさん、kiyotakaさん、かのこやさん、Kim Dong Hyeonさん、たくっぴょさんなど、積極的に角度系の展開図折りをする。

skさんのアフリカゾウ

  • zoom会的なやつで、かのこやさんに角度系の創作手法とオリヒメの使い方を教えてもらう。角度系創作を始める。
  • Oristに加入する。だんだん折り紙関係の知り合いが増えてくる。
  • オオカミがマガジンの展開図コーナーに採用される。
  • Oristの展示に参加する。
  • 初めて折り図を描く。馬がマガジンの折り図に採用される。
  • 初めて東京コンベンション(2023)に参加する。
  • Oristの15分創作でいろいろ作る。シンプル寄りの創作にも興味が出てくる。
  • ブログを始める。

影響を受けた折り紙作家 

大学生以前

基本形の活用や4鶴といった最も基本的な技法は、桃谷さん、山田さん、高井さんから学びました。

神谷さんと川畑さんの折り図には長年慣れ親しんできました。両者とも非常に多彩な技法を用いているので、このお二人から複雑系折り紙の基礎を学んだ気がします。動物作品の仕上げ方は神谷作品から学びました。

小松さんのホームページやブログで角度系創作の試行錯誤の過程を学びましたが、自分の創作に取り入れるのは非常に難しいと感じていました。

折り紙計画/Origami Plans

大学生以降

直接的に影響を受けたのはかのこやさんとすけさんです。かのこやさんにオリヒメを使った創作を教えていただいたことと、すけさんの記事「ネコの創作過程」を読んだことをきっかけに、本格的に角度系創作を始めました。

sukesanorigami.blog.jp

展開図や折り図を通して間接的に影響を受けた作家は挙げていくときりがないですが、特に参考にしているのはskさん、kiyotakaさん、勝田恭平さん、萩原元さん、ザキさん、Kim Dong Hyeonさん、Jeong JaeIlさんです。

目指す作風はいまいちはっきりしませんが、写実性と折り紙で折りやすい造形のバランスを取りつつ、何らかの新規性を盛り込んだ作品を作っていきたいです。

折り紙作品 カブトムシ

創作: 2021/9

紙: チョコグラシン 38×38cm

32等分蛇腹です。

前脚の符節をカールさせているのがポイントです。

展開図の折り畳みは(蛇腹作品としては)簡単ですが、その分仕上げの比重が大きいです。ホイル紙、もしくはグラシン紙以下の薄さの紙でないと、まともに仕上げられないと思います。本折りの際は胸角と鞘羽の部分に裏側からホイル紙を貼って、補強と形状維持をしました。

カブトムシは折り紙では最も人気の題材の一つなのではないでしょうか。数多くの作例がありますが、複雑系で代表的なのは、神谷流 創作折り紙に挑戦!に掲載されている、神谷哲史さんのカブトムシでしょう。

おりがみはうす - 神谷流 創作折り紙に挑戦!

22.5°系・ダイヤ型と蛇腹・ブック型という違いはありますが、本作は神谷さんのカブトムシの影響を強く受けています。具体的には、

  • 胴体を分厚く折り出し、重量感を表現する
  • 後脚の付け根を、前脚・中脚の付け根よりも後ろにする
  • 角の仕上げ方

といったところです。

胴体の厚みは、背中側と腹側を、下図の赤矢印の部分でつなぎ合わせる構造にすることで表現しています。また、鞘羽と腹部を別々に作り、箱型に組み合わせて立体的にしています。

断面図↓

もうちょっと分かりやすい図↓


創作過程については、基本的にBox Pleating Studioをいじってカド配置を考え、必要なところに幅変換などを追加していっただけなのであまり言えることがありません…

bp-studio.github.io

Box Pleating Studioは蛇腹設計の支援アプリで、神谷パターンを自動的に作ってくれます。Brandon Wongさんが動画で使い方を解説しています。

youtu.be

デザインの指針はかなりの部分が神谷さんのパクリですが、神谷さんの作品は丸みを強調したデザインになっているのに対し、本作はよりリアルに近いバランスにしています。(本作が神谷作品を超えたとかそんなことは全く思ってないです)また、蛇腹の自由度を活かした小技として以下のような工夫点があります。

  • 後ろ脚を他の脚より長くしている
  • 32等分で済ませるために、頭角と触角を非対称構造で折り出している(左右対称だと32等分に収まらなかった)
  • 前脚のトゲ

試作の写真です。

 

 

折り紙作品の比率ってどうやって決めるの?

折り紙の世界において、いわゆる22.5度系*1は、折り鶴やアヤメといった伝承作品から前川淳さんの悪魔、神谷哲史さんのエンシェントドラゴンまでも含む巨大なカテゴリーです。折りやすいことや多彩な造形ができるのが魅力で、今後も多くの作品が生み出されることでしょう。

著名な折り紙作家の22.5度系の作品を折ったことのある方は、折り図の最初の数ステップで、基準点を折りだす作図的な折り方をした経験があると思います*2

こういう作品では、大抵は正方形の一辺をa + b√2 : c (a,b,cは整数) に分ける点を折り筋の基準としています*3。例えば、筆者の猫の基準点は1+√2 : 4です。

筆者は、22.5度系作品の創作における最大の障壁は比率であると思っています。創作初心者の方は、比率ってどうやって決めればいいの?という疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。しかし、比率の決定は慣れればそこまで難しい問題ではありません。今回はOrieditaを使って、比率の決め方・作図の仕方の例を紹介していきます。

 

Orieditaについて

使ったことがない人はぜひダウンロードして、本記事を見ながら実際に作図してみてください。

oriedita.github.io

起動すると、このような画面になります。

多くの機能がありますが、本記事では赤丸で示した、制限された角度の折り筋を引く機能だけ使います。

赤丸のボタンをクリックし、画面上でマウスの左クリックでドラッグすると、折り筋が引かれます。また、右クリックで折り筋を消去します。

例1: ボトムアップ

*4

部分的なパーツから全体に向かって作品を組み立てていく場合です。

例として、猫を使います。本作では頭→前足→後半身の順で創作しました。

猫の創作過程の記事を読んでいない方は、まずこちらを一読してください。↓

rokishi-origami.hatenablog.com

それでは、Orieditaで作図していきましょう。

「折り紙作品 猫」の記事を読んでいただければ分かると思いますが、以下の作図の手順は、実際に本作を創作した過程と大体同じです。

 

ステップ1で、グリッドに沿って線を3本引きます。ここで耳の点が決まります。

ステップ2以降では、前のステップでできた交点を次々に使って新たな線を引いていきます。

ステップ5で前足の位置が、ステップ6で背中の曲がりが始まる位置が決定しました。

ステップ10で紙の端の位置が決定し、ステップ12では余分な線を消しました。このようにして、本作の基本的な折り線を作図することができます。

後は、22.5°-67.5°-90°の三角形の辺の比を用いて、適当に補助線を引いていけば最終的な比率が分かります。

実際に折るときは数値計算して基準点を定規で測ってもいいですし、神谷哲史さんの「比の折り出し検索スクリプト」を使って折り出し方を調べてもよいです。

比の折り出し検索スクリプト

本作の場合はこのようになります。

ボトムアップ型の場合に重要なことは、比率と紙の端の位置は最後に決定するということです。創作中は、22.5°の線に沿って交点を作る→交点から線を伸ばすという作業を繰り返します。この作業はOriedita上でやってもよいし、紙を折りながら考えてもよいです。どの交点を選べばよいか?というのは難しい問題で、勘によるところが大きいですが、なるべくシンプルに作図できる点を選ぶとよい気がします。

例2: トップダウン型①: 展開図決め打ち

折り紙創作に慣れてくると、最初から作図したい展開図を思い浮かべられる場合もあります。その場合は、作図さえできればよいわけです。

鶴の基本形や魚の基本形といった、伝承基本形を基に創作する場合もトップダウン型と言えます。

例として、フラミンゴを使います。

rokishi-origami.hatenablog.com

筆者がフラミンゴを作った時は、鶴の基本形を基にしてヒダを追加した展開図を思い浮かべていました。

こちらもOrieditaで作図していきます。

ステップ1で鶴の基本形の展開図の左半分を描きました。ステップ4、5で紙の端を決定しました。

後は補助線を引いたりして基準点の比を調べて、実際に折ってみればいいわけです。

フラミンゴの場合は、1 : √2の長方形を並べていけば、1 : 4+5√2であることが分かります。

例3: トップダウン型②: 比率決め打ち

折り紙作品でよく使われている比率から、好きなものを選ぶ方法です。

宮島登さんの記事「文系作家の行き当たりばったり創作法」の、「3. 角の配置を決める」でも紹介されています。

origami-fantasia.com

メジャーな比率をピックアップしてみました。

筆者の作品で言うと、aはキリン、bはインドサイ、dはリス、狛犬、eはシベリアンハスキーに当てはまります。

rokishi-origami.hatenablog.com

fはaの比率から折り出せる構成の一つです。鶴の基本形の幅と同じ幅の領域を追加した構成で*5、袋井一樹さんのダルメシアンで使われています。

さらに、メジャーな比率の中で交点を作って線を引くという作業を繰り返せば、もっと複雑化することができます。

例えば、dの1 : 1というもっとも単純な比率を使っても、これだけいろいろな交点が発生します。

これだけバリエーションがあるとどれを使えばよいか迷ってしまいますが、出版されている折り図を見て、どの比率が使われているか調べてみると参考になるでしょう。

最後に

必要に応じて様々な比率を使えると、創作の幅が一気に広がります。

Orieditaおよびオリヒメはめちゃくちゃ便利なので、折り紙創作をしたい方はぜひ使ってみましょう。

本記事の内容はあくまで筆者の例なので、他の人がどうやってるかは分かりませんが、似たような感じなのではないかと思います。

余談

  • 本記事では22.5°系について書きましたが、別に22.5°にこだわる必要はありません。結局のところは、小松英夫さんが提唱している「折り線トポロジー」から好きなものを選べばよいわけです。origamiplans.hatenablog.jp
  • 本記事で示した作図のプロセスは、他人の作品の展開図の比率を調べて展開図折りをする際にも使えます。

*1:22.5° (90°の1/4) の倍角の折り筋からなる基本構造を持つ折り紙作品のこと。慣用的な言葉であり、厳密な定義はないと思います。

*2:何の話だか分からない方は、例えば前川さんの「本格折り紙: 入門から上級まで」に掲載されている龍を折ってみると良いでしょう。

*3:数学的な背景は、ようこそ折り紙のホームページへ 掲示板過去ログまとめに書いてあります。

https://komatsu.origami.jp/misc/meguro-bbs-log/2007-02-18.html

*4:森末圭さんが、ボトムアップトップダウンと呼んでいるのを真似しました。

私の創作を変えた2人の異邦人 Two Foreigners Who Changed My Creation|Kei Morisue / 森末 圭 / 森 魔鬼

*5:神谷哲史さんが関連する内容をまとめています。

創作tips:ヒダの幅を22.5度の構造と合わせる