ろきしの折り紙倉庫

主にオリジナルの折り紙の創作過程について書きます。

折り紙作品 トナカイ

創作年月:2026/9

使用した紙:ビオトープ 55×55cm

展開図

比率と主要な折り線。


半年ぶりの新作です。たまに折り紙を折ると楽しいですね。

創作のきっかけは、図1(a)で示すパーツ配置でシカ系の動物を折れそうだと思いついたことです。

図1(a)今回採用した配置。(b)シカ系の作品でメジャーな配置。

このアイデアは以前思いついたもので、その時は単に面白い配置を見つけたくらいに考えていました。しかし、ちょうど2026年の折紙探偵団東京コンベンションで森澤碧人さんの「非対称構造のすゝめ -ザトウクジラの創作過程を通して-」を受講して、論理的にバーツ配置を評価する重要性を実感しました。そこで本作のパーツ配置(a)を、シカ系の折り紙でメジャーな(b)の配置と比較してみます。

(b)の配置では対角線上の?で示した領域が余るため、使い道を考えるかうまく仕舞い込む必要があります。それに対して(a)の配置では対角線上に前脚を並べることで、対角線上の紙を消費しきることができます。さらに、図1(a),(b)の緑矢印で示すように(a)は(b)よりも前脚領域の横幅が狭くなるのも利点で、ツノの領域を紙の中心方向へ広げることができます。

展開図、想定する完成形は左右対称ですが、右前脚と左前脚を展開図上で前後に並べるため、非対称作品という扱いになります。小松英夫さんの分類によると、「D:造形も基本構造も対称的だがパーツ配分が非対称的」になります。

origamiplans.hatenablog.jp

 

コンベンションの期間に一つ目の試作に取り組んでみました。
基本構造は、図2に示すようにラフな円領域分子法でざっくり決めました。

図2 基本構造の決定。

分子や円領域の考え方については、さくBさんの動画が分かりやすいです。

youtu.be

youtu.be

 

図2を折ってみた結果を図3に示します。

図3 最初の試作。

シカではあるが…くらいの出来です。胴体が小さく、後ろ脚が貧弱です。顔の周りは紙が余りまくっています。一方で、非対称な前脚パーツの配分による造形の破綻は起きなさそうなので、うまくいきそうという直感がありました。

ツノが大きく折り出せるので、題材をトナカイに決めました。

この試作を折ってみて、前脚が後ろ脚よりもだいぶ長く折り出されることに気づきました。図3の展開図と樹形図を見てみると、前脚(緑)の付け根に意図せず帯領域(薄緑)が発生していることが分かります。

前脚の長さは帯領域含め充分そうなので、後ろ脚を強化すべく後半身に領域を追加していきます。後ろ脚の長さが、帯領域を含めた前脚の長さと等しくなるように、後ろ脚の位置を設定していきます(図4)。この領域追加によって、ついでにツノの領域も増やせそうです。

図4 後半身の領域追加

後ろ脚の修正方針を決めたので、紙を折って手探りで拡張した部分の折り方を考えていきます。

 

図5 後半身の構造の決定。(一値性が崩れているので円領域は不正確です)

図5の試作で、後半身の構造が決定しました。胴体の面がすっきりしていていい感じです。図5の試作は、後ろ脚だけでなくツノや顔の修正も進んだ段階です。後ろ脚の領域追加によって、ツノが豪華になりました。また、図3で耳だった部分をツノに充てました。
(図3の最初の試作から一気に変わってしまいましたが、この間の試行錯誤の履歴があまり残っていません…)

 

一通り整えた結果を、図6に示します。

図6 とりあえずの完成。

脚は、蹄を折り出さない簡潔な仕上げにしています。脚の長さが蹄を折り出すには短すぎたというのもありますが、後ろ脚の22.5°が折り紙っぽくて良いと判断しました。本当は図4の領域追加幅を色々変えて検証すべきですが。

この時点で改善したい点として、以下の2点がありました。

  • 耳が小さく、位置も前に寄りすぎている
  • ツノが太すぎる

まず、耳の改善方法を考えます。
試作をいじっていたら、ツノの後ろに耳に使えそうな紙が余っていることに気づきました。そこで、図7に示すように耳の位置を変更しました。

耳が移動したことで顔周辺の紙に余裕が生まれたので、余計な線を減らしすっきりとした顔のデザインにすることができました。

図7 耳の位置の変更。

次に、ツノの改善方法を考えます。

まず、図8の丸囲みで示した部分のツノの枝分かれが折りやすくなるように、図8の青く塗りつぶしたエリアの折り方を変更しました。

図8 ツノの構造変更。

次に、図8の状態からツノの沈め折り幅を半分に細くすると、図9(a)のようになりました。ここで、図9(a)の青い丸で囲んだ部分に、2つの青矢印で示すズレが生じることが分かりました。このまま折ることもできますが、余計な厚みにつながりそうなので修正します。

このズレは、図9(b)の赤線のように折り筋を描き直すことによって解消されます。全体の折り筋を修正すると図9(c)のようになります。最終的に図9(d)のようになり、青い丸で囲んだ部分のズレが解消されたことが分かります。

このような作図メインの作業は、実際に紙を折るよりもOriedita上で試行錯誤したほうが効率が良いです。

図9 ツノの沈め折り幅の調節。

完成です!

図10 完成!

最終的な展開図は一見複雑そうに見えますが、図2で決めた単純な基本構造がそのまま残っていることが分かると思います。

前回の記事のラクダでは、デッサン的なことに触れてリアルな造形を目指していたくせに、今回は完全にアイデア主導の作品となり、あまり完成形のイメージを持たずに作ってしまいました。

胴体の造形は折り紙っぽいという意味では悪くないと思いますが、トナカイとしての特徴を盛り込めていないという意味では改善の余地があると思います。

展開図折りに関して、展開図を畳んだ時点でほとんど形が完成しているので、再現性は高いと思います。よかったら折ってみてください!

折り紙作品 フタコブラクダ

創作年月 : 2026/2

使用した紙 : ヴィンテージゴールド 50×50cm

展開図。水色の補助線はすべて22.5度の整数倍角。

比率。

前作のゴールデンレトリバーから1年ぶりの新作です。おそらく学生時代最後の創作になります。

創作のきっかけ

今年度は修論や折り図制作などいろいろあって創作はあまりできなかったものの、折り紙関係のイベントやサークルには参加しており、いろいろな方に折り紙創作についてお聞きする機会がありました。その中で感じたのは、魅力的な作品を作る折り紙作家の多くは、折り紙そのものに関する技術だけでなく、創作対象を分析して特徴を引き出すことに優れているということです。「折り紙創作ができるようになるには、とにかくひたすら紙をいじって試行錯誤しなさい」というようなニュアンスの文言は折り紙界ではよく言われますが、それだけでなく試行錯誤の過程の中で、思い描く題材の特徴と手元の紙の形が一致するかどうかを予測したり、偶然良い形ができる瞬間を見逃さない力が必要なのかなと思います。そのためには折り紙の技術より手前の、対象の特徴を抽出する力や折り紙の形に対する審美眼も必要になるのではないでしょうか。

フタコブラクダを折ろうと思ったのは、以上のようなことを考えてデッサンに興味を持ち、「立体と線でみるみる描ける!ウェザリーの動物デッサン」(ジョー・ウェザリー著、2020) という本を買ってみたのがきっかけです。

https://www.graphicsha.co.jp/detail.html?p=41146

この本のラクダのページで、コブが下の図のように箱型に描かれており、これを折り紙で取り入れてみようと思いました。

本に描かれている図を参考に描いた絵。

折り紙のフタコブラクダと言えば、勝田恭平さんとShuki Katoさんの作品が人気だと思います。さすがにこれらのレジェンド作品に及ぶ創作は天地がひっくり返ってもできませんが、これらの作品ではコブの立体化にはあまり重きが置かれていないので、良い差別化のポイントになると考えました。

katsuta-origami.com

shukigk.wixsite.com

 

創作過程

折り紙で箱形を作るには、蛇腹っぽくすれば難しくありません。

コブの試作。

箱形のコブ 3パターン。展開図は箱形を平坦につぶした場合。

22.5度系と相性がよさそうな右の展開図を採用して、全身の構造をOrieditaで考えていきます。コブの構造が結構複雑で、比率は面倒な感じになりそうです。煩雑な交点をなるべく増やさないような構造を探っていきます。

展開図案。ダイヤ型(対称軸が正方形の対角線)を採用し、展開図は対角線の左半分だけ描いています。

案1は一番スタンダードな感じです。コブから延びるヒダを使って蹄を作れるかもしれません。しかし、このままだと頭の領域が足りません。案2は、前脚を内部角にした場合です。狛犬やゴールデンレトリバーでは前脚を内部角にしましたが、ラクダでは分厚すぎる気がします。案3は、前脚を正方形の角に配置した場合です。前脚がペラペラになりますが、頭部に余裕があったり構造的にもすっきりしていたりしてよさげです。

案3は、下の図のような感じで、コブの構造から22.5度の折り筋を延長して交点を作りながら考えていきました。Orieditaでは、最終的な紙の大きさを決めずにいくらでも折り筋を延長できるので、比率の数値を一切考えずに作図することができます。

案3の作図手順。*最終的な完成形の比率とは異なるので注意!

案3をベースに、Orieditaの頂点を折り畳み可能にする線を追加する機能を使って、実際に畳める展開図を考えていきます。

Orieditaの、頂点を折り畳み可能にする線を追加する機能。

Oriedita上での試行錯誤の結果、下図のような2種類の展開図を得ることができました。頭のほうにとりあえず対称軸と平行なヒダを伸ばし、さらに右図では蹄の表現と前脚の厚み強化のために紙の外周にヒダを追加しました。

折り畳めるようにした展開図2種。山谷は考慮していません。

いけそうな感覚を得たので、上図右の展開図を参考にしながら実際に折ってみます。上の展開図はあくまで参考で、この通りに折ることを目指すわけではないです。

コブと胴体はいい感じにできました。前脚は長すぎたので、根元で段折りして長さを調整しています。首と頭は何も考えていなかったので、この試作をいじって検討していきます。

全体試作その1

頭の折り方の検討の結果、これまでいろいろな作品でやっていたのと同じように、紙の表裏を反転させて耳を作るのがよいという結論になりました。特徴的な唇は、余っている紙を贅沢に使ってぐらい折りで表現することにしました。

この試作を広げながら改めて展開図を描き起こしてみると、下図のようになりました。黒丸で囲った部分にどうしても22.5度系以外の角度が生じてしまうことが分かりました。

全体試作その1 の展開図

2つ目の試作にとりかかり、胴体の仕上げを考えつつ顔をブラッシュアップしていきます。

全体試作 その2

全体試作 その1では首全体の色が反転していましたが、色を反転する範囲を顔だけにすることでインサイドアウトの表現として昇華することができました。ついでに毛の生えていない足先の色も反転させました。ちょっと羊っぽくなってしまいましたが、インサイドアウトを取り入れたラクダは珍しいと思うので個性になると考えました。

 

この辺で、22.5度系できれいに収めたい欲が出てきたので、Orieditaで展開図の修正を試みました。その結果、下の図のような感じに22.5度系で統一することができました。一方で、首のヒダが若干細くなってしまい、首を上に向ける中わり折りが引っかかってうまくできず折り方を変えなければならないことが予想されました。

22.5度系で統一した展開図

それでも大した違いではないだろうと考え、ぶっつけ本番で折ってみました。

失敗…

首と頭の調整がうまくいかず、没にしました…

 

元の全体試作その1 の構造を採用して、完成としました。

完成!

振り返り、その他

結局デッサンを意識した要素はあまり入れられず、その他不満点は色々ありますが、フタコブラクダ自体が結構難しい題材だと思うので頑張ったほうだと思います。

箱形の立体的なコブを取り入れることには成功しました。一方で、前後のコブの間に隙間があったほうが良かったかなと思います。この辺は最初の検討不足ですね。例えば前のコブを前方に22.5度傾ける設計にしたら面白いかもしれません。

コブの折り方は、川畑文昭さんのフタコブラクダとだいぶ似ていると教えていただきました。今回は立体化を目的としていたので趣旨は異なりますが、全く新しいことをやるのは難しいですね。

www.giladorigami.com

 

口元の (構造的でない) ぐらい折りでの表現にたどり着くまでには、いろいろな構造を試して結構苦戦しました。また、頭頂部を出っ張らせたり、目や耳の位置を調整したり、顔が首の毛に埋まっている表現をしたりなど、細かい調整に気を配っています。

口元のぐらい折りの様子

ヴィンテージゴールドはクラフト紙にシックな光沢のある塗装がされた紙で、非常にかっこいい紙です。ほどほどの厚み (今回は連量63kgを使用) で折りやすく、片面塗装で今回の控えめなインサイドアウトにもぴったりでした。塗装も比較的禿げにくいと思います。

www.takeo.co.jp

展開図折りに関して、折りたい方がいらっしゃるかどうかは分かりませんが、コブ周辺の折り筋が面倒であることと、首から顔にかけての再現性が低いことから、展開図折りはあまりおすすめしません。腕に自信のある方は挑戦してみてください。

東大テクニカル折り紙 紙ワザ。が出版されました!

東大テクニカル折り紙 紙ワザ。が、日本文芸社より2026/2/27に出版されました!!

www.nihonbungeisha.co.jp

Oristメンバーによる、気合の入った作品たちの折り方が多数掲載されます。無事に出版できてよかったです。出版にかかわった皆様に感謝です!

私のイチオシは丸山くんのハチドリです。展開図上の折り筋は少なめですが、立体工程だらけで、きれいに折るのは難しい作品です。短い脚を内部カドで直接出しつつ立体化するのが面白いです。

 

私はコウモリの折り図を描きました。Level☆☆/中級で、工程数は92工程です。鶴の基本形から始めるので、折り手順を考えるのは比較的簡単でした。難易度を抑えつつ、顔の作りこみやお腹の立体感で自分らしさを出せた作品だと思います。自信作ですので、ぜひ折ってみてください!

画像

 

下の記事で紹介したコウモリの仕上げを、折り図向けに少し改修してあります。

rokishi-origami.hatenablog.com

 

本書では、折り図では紹介しきれなかった作品の展開図がたくさん載っています。こちらのコーナーでも、猫と狛犬を紹介していただきました。

rokishi-origami.hatenablog.com

rokishi-origami.hatenablog.com

 

また、コラムでは、進藤くん、林くん、津村くんと自分が、折り紙創作についてインタビュー形式で記事を掲載しています。短い内容ではありますが、4人のスタイルの違いが出た面白い内容になっていると思いますので、作品と見比べながら読んでみてください。

Oristメンバーの思いが詰まった良い本だと思いますので、ぜひお手に取ってみてください!

折り紙作品 ゴールデンレトリバー

創作:2025/3

紙:里紙 (びわ) 55×55cm

自分らしい造形の作品になったと思います。

ゴールデンレトリバーの折り紙で代表的なものは、Park Jong Wooさん、神谷哲史さん、かのこやさんあたりでしょうか。

 

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おりがみはうす - 神谷哲史作品集2

改めてこれらの作品を見ると、ゴールデンレトリバーという特定の犬種でも体型や顔のデザインでここまで各作家の個性がでるというのは少し驚きです。

これらの作品にはない要素として、過去作の狛犬と似たような、ヒダを使った豪勢な毛の表現を取り入れるということを思いつきました。狛犬では下の図のように前足を内部カドにすることで、紙のフチをたてがみの表現に用いました。

rokishi-origami.hatenablog.com

前足を内部カドにする利点としては、以下のような点があります。

  • 紙のフチを毛の表現などに活用できる→もふもふの犬に適する
  • 紙の内部領域の無駄が少ない
  • 前足が分厚くなるので、完成作品がしっかりとした印象になる

前足を内部カドにして犬のもふもふ感を表現している作品は、自分の知っている範囲では勝田恭平さんの「ポメラニアン」、かのこやさんの「パピヨン」があります。表現方法にはお二方の個性が出ており、ポメラニアンでは胸に大きな面を用意すると同時に、背中を立体的に表現しています。パピヨンでは肩周辺の長い毛並みに紙を割り当てています。

katsuta-origami.com

 

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これらを踏まえ、まずはいつものようにorieditaでカド配置を考えていきます。

いくつか考えてみたうち、最もシンプルなものを試しに折ってみました。

肩の部分に狛犬と似たような毛の表現をしてみましたが、紙が少なく貧弱な感じがします。後半身は紙の効率とシルエットを重視して、腹割れ構造にしました。紙の裏面が出てしまいますが、気にしないことにします。

全体のバランスは良いですが、結果として袋井さんのダルメシアンとほとんど同じ構造になってしまいました…

 

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しかしこの構造でまとまりが良いので、別の部分でオリジナリティは出せるだろうと考えてこのまま進めていきます。

肩の毛並みの表現を、首から肩まで一続きの紙でまとめて覆うような表現に変更してみました。ついでに後ろ脚も立体的にしました。ゴールデンレトリバーにしては肩回りがゴツすぎる気もしましたが、もふもふの表現としては効果的と考えて採用しました。

この時点で当初のコンセプトである「狛犬と同じような毛の表現」は消滅しましたが、気にせず進めていきます。

ブログを書いているときに気づきましたが、紙の重なり方が何となく小松英夫さんの「ひつじ」っぽいです。無意識に影響されていたのかもしれません。

komatsu.origami.jp

後は顔を考えるのみです。発想としては、前足から出る線を屈折させて耳のカドを鈍角で折り出し、残りの部分で何とかして目鼻を折り出すという感じです。

試行錯誤の末、最終的に採用した顔の造形です。

何度か折り直して推敲し、色々なこだわりを詰め込みました。

実際の完成形とは少し異なりますが、下の絵のようなポリゴン的な造形をイメージして作りました。過去作の「猫」では顔の凹凸をうまく再現できませんでしたが、今回は比較的うまくいきました。

目の造形にもこだわっています。90°の小さいカドを広げてつぶすとまぶたのような表現ができますが、まぶたの向きによって印象が変わります。下の写真は、それぞれ左はまぶたが下にある場合、右はまぶたが上にある場合です。左はなんとなく不気味なのに対して、右は自然な造形で目つきが優しい感じがしたので、右の折り方を採用しました。

 

構造としては袋状の90°の内部カドになっています。過去作の「リス」で使った構造に近いです。袋状になっているので、折り込んでいくと自然と立体的に仕上がります。仕上げの折りを広げて元に戻すと、下の写真のようになります。

基準点のないぐらい折りだらけで再現性は低いです。折る度に口の形が変わります。

左右の耳の付け根を離して額を作るために、下の図のように左右非対称に折り筋をずらすという強引な方法を用いています。下の図の水色の菱形の部分が額になります。平坦条件を満たす正確な作図方法が分からなかったので、下の展開図は大まかな角度で描いています。細かい構造の検証はまた今度やります。

なお本折りでは全て適当なぐらい折りで済ませています。

 

完成です!

本折りの紙は迷いましたが、色数の多い里紙からゴールデンレトリバーっぽい色の紙を選びました。

 

↓こちらはOristの根津の展示会の3日目で展示したバージョンです。紙はフレンチパーチ 45×45cmです。顔の仕上げが最終バージョンと異なります。横顔はもしかするとこちらのほうが良いかもしれませんが、鼻筋を凹ませてしまっているので、上から見たときにあまりゴールデンレトリバーっぽくない気がします。

 

今回は構造的には袋井さんのダルメシアンとダダ被りで新しさはありませんが、造形では立体的な毛並みの表現や顔のデザインで面白さを出せたと思います。私の技量では全く新しい作品というのはまずできないので、これからも色々な要素の組み合わせで新しいことができたらと思います。

折り紙作品 チンパンジー、テングザル

創作年月: 2024/7

紙: チンパンジー…楮紙 20×20cm、テングザル…ヴィンテージゴールド 20×20cm

長山海澄さん監修、国際熱帯木材機関(ITTO)・横浜市立の3つの動物園・Oristがコラボした「折り紙で親しむ熱帯林の動物たち」に、折り図が掲載されます!

www.city.yokohama.lg.jp

折り工程の監修と折り図制作は長山さんに依頼しました。

今回は、以下の点について考慮しながら創作しました。

  • 異なる種類のサルの折り分け
  • 難易度を下げる、工程数を減らす
  • 紙効率 (紙の大きさに対する完成形の大きさ) を上げ、なるべく15cm四方の折り紙用紙で折れるようにする

難易度、工程数、紙効率については、以下のような工夫が考えられます。

  • 細長いカドを出さなくてよいデザインを考える
  • 折り紙用紙のカドを有効活用する
  • 複雑な比率を使わない
  • 伝承基本形を活用する

ただし、紙効率と難易度は、シンプルな作品ではトレードオフになる場合があります。

チンパンジー

胴体が短く手足が長いですが、手足をリアルに折り出そうとすると、多くの領域を消費してしまいます。デフォルメとして腕を長く折り出し、後ろ足を短く折り出すことにします。また、顔の造形が分かりやすいように、正面の姿を折ることにします。

クエンティン・トロリップさんのチンパンジーを参考にして、顔の造形から考え始めました。

おりがみはうす - クエンティン・トロリップ折り紙作品集

他のサルと区別するポイントとして、耳を明確に折り出すことを意識しています。

顔の構造を配置し、正方形のカドを腕に割り当てる構造を考えます。二艘船の基本形を用いて無理なくまとめることができました。

仕上げの工程では、沈め折りや中割り折りを使わなくて済むように工夫しています。長山さんの監修で、唯一避けられないと思っていた沈め折りが無くなり、折りやすくなりました。

かなり平面的なデザインで、自立もしませんが、チンパンジーのデザインとして分かりやすいところに落とし込めたと思います。

折り図の工程数は46工程です。

テングザル

平らで大きな鼻を持っています。また、かなり小顔で四角い顔をしています。顔の表現のために、チンパンジーと同様に正面の姿を折ることにします。

体型もチンパンジーとは大きく異なり、でっぷりした胴体と細長い手足、長めの尻尾を持っています。チンパンジーは後ろ足を短くしてもあまり違和感はありませんでしたが、テングザルの場合は腕と後ろ足を同じくらいの長さで折り出した方がよさそうです。

手足の配置をいくつか試作してみた結果、下のような王道の配置を採用しました。

最初は、この配置では手足が短すぎるのではないか?と考えていましたが、腕を実際のカドよりも細長く見せる方法を思いつき、うまくまとまりました。

こちらは脚を曲げて座らせることで、自立するようにできました。

シンプルながらもいろいろな表現を盛り込めたので、気に入っています。

折り図の工程数は54工程です。

 

シンプル系の創作は、複雑な作品とは考えることが違って面白いです。単純な折りで題材をうまく表現できると、達成感があります。

 

*1

 

*1:

ちなみにテングザルの折り紙は、調べた限りでは銀のむしさん、William Gozaliさんが作っています。

www.youtube.com

wg-origami.blogspot.com

FAVINI TOKYO

今回は、初めて使ってみた紙を紹介します。

イタリアと日本の美的感覚を融合した、ファヴィーニ社(FAVINI)のエンボスペーパーです。
特殊なエンボス技術によって生み出された、深みのあるエンボスが特徴。
日本の都市の現代性から着想し、錆や石、コンクリートなどを思わせる
落ち着いたカラーラインナップを揃えています。

www.takeo.co.jp

竹尾のホームページで見かけて、質感と名前のかっこよさに惹かれて買ってみました。

FAVINI TOKYOは、イタリアの特殊紙メーカーFAVINI S.R.L.と、タントやレザックシリーズなどで有名な特種東海製紙が共同で発売している紙です。2022年に発表された比較的新しい紙です。

https://www.tt-paper.co.jp/app/files/uploads/2022/11/20221121_info.pdf

連量は103kg、301kgで、色は7種類あります。折り紙用としては103kgの方しか使えないと思います。

ライトグレーを購入してみました。

 

きめ細かい均一なエンボスが非常にきれいで、均整の取れた雰囲気があります。よく見ると、凸の部分が明るく、凹の部分が暗く見えます。

連量103kgのものは片面のみ加工があり、裏面はつるつるです。裏面にも模様はありますが、表のエンボスと比べると全然目立たないので、表裏の見た目の違いが分かりやすいです。紙の裏が出る作品を折るときは注意が必要です。

(レザック66も表のみ加工されており裏はつるつるですが、裏の模様もはっきりしているので、ぱっと見では表裏が分かりにくいです。)

折り心地はレザック66(100kg)とほとんど一緒です。レザックで折れる作品ならこの紙でも折れます。エンボスの手触りが紙とは思えないほど圧倒的に良いからか、何となくレザックよりも柔らかい感じがしました。

萩原元さんのゾウ、24×24cm

 

エンボスが非常に均一で人工物っぽいので、動物を生き生きと仕上げるにはあまり向かないかもしれません。

 

拙作の狛犬、55×55cm

糊付けはしてないです。

石っぽさを活かせて悪くないですが、もっと広い面を持つ作品のほうがこの紙には合っているかもしれません。

総じて厚手の紙としては非常に良いと思います。インディゴやラストの色合いがとてもかっこいいので、またの機会に買ってみようと思います。

ちなみに公式ページでも折り紙に使っています。↓

www.favini.com

折り紙作品 カブトムシ2

創作: 2024/8

紙: コズピカ30×30 cm + ホイル紙部分裏打ち

展開図の右半分では、胸の関節のくびれの処理をした後を図示しました。

前作と比べて、折るのが非常に楽です。また、脚が短くなり、体高が増したので、リアルではなくなりましたがより重量感がある仕上がりになりました。触角は省きました。

rokishi-origami.hatenablog.com

 

構造は16等分蛇腹で、おおむね四鶴構造*1です。

四鶴構造はカブトムシでは王道の構造で、Robert J. Langさんのカブトムシが有名です。山田勝久さんの作品群も四鶴だったと思います。

“Samurai Helmet” Beetle, Opus 417

Amazon.co.jp: 1枚のかみでおる おりがみ 世界のカブトムシ・クワガタ : 山田 勝久: 本

ということで今更感はありますが、デザインで個性は出ていると思います。

創作過程については、あまり語れることはありません。下図のパターンをいじってカブトムシを作ろうと思い立ってから構造はすぐ決まったので、仕上げの吟味に時間をかけました。

脚の長さと位置の調整のために、神谷さんのメタリフェルホソアカクワガタの130工程目の処理をパクっています。

 

全体的に、シンプルな構造を活かした仕上がりになっています。具体的には以下の点があります。

  • あまり分厚くならないので、仕上げの自由度が高いです。
    • 鞘羽がペラペラな辺カドになっています。鞘羽を内部カドで折り出した前作
      と異なり、立体感を出すのが簡単です。
    • 前作では体高(胴体の厚み)を構造的に折り出していましたが、今回は雑に内側を膨らませて表現しています。
  • 頭角の先端の枝分かれの折り出しは、手軽な方法を用いています。こういうのは等分数が少ない作品ならではという感じがします。
  • 完成形の見た目が、そこまで蛇腹っぽくない感じになっています。

胸と鞘羽の仕上げのために、本折りの際は下図のブルーグレーの部分にホイル紙を裏からスティックのりで貼り付けました。

 

一応仕上げのヒントを載せておきます。

くびれの処理

頭角

鞘羽

胸角

*1:ハイパーステジアさんの用語辞典

折り紙用語辞典 | hyperesthesia