創作年月:2026/9
使用した紙:ビオトープ 55×55cm






半年ぶりの新作です。たまに折り紙を折ると楽しいですね。
創作のきっかけは、図1(a)で示すパーツ配置でシカ系の動物を折れそうだと思いついたことです。

このアイデアは以前思いついたもので、その時は単に面白い配置を見つけたくらいに考えていました。しかし、ちょうど2026年の折紙探偵団東京コンベンションで森澤碧人さんの「非対称構造のすゝめ -ザトウクジラの創作過程を通して-」を受講して、論理的にバーツ配置を評価する重要性を実感しました。そこで本作のパーツ配置(a)を、シカ系の折り紙でメジャーな(b)の配置と比較してみます。
(b)の配置では対角線上の?で示した領域が余るため、使い道を考えるかうまく仕舞い込む必要があります。それに対して(a)の配置では対角線上に前脚を並べることで、対角線上の紙を消費しきることができます。さらに、図1(a),(b)の緑矢印で示すように(a)は(b)よりも前脚領域の横幅が狭くなるのも利点で、ツノの領域を紙の中心方向へ広げることができます。
展開図、想定する完成形は左右対称ですが、右前脚と左前脚を展開図上で前後に並べるため、非対称作品という扱いになります。小松英夫さんの分類によると、「D:造形も基本構造も対称的だがパーツ配分が非対称的」になります。
コンベンションの期間に一つ目の試作に取り組んでみました。
基本構造は、図2に示すようにラフな円領域分子法でざっくり決めました。

分子や円領域の考え方については、さくBさんの動画が分かりやすいです。
図2を折ってみた結果を図3に示します。


シカではあるが…くらいの出来です。胴体が小さく、後ろ脚が貧弱です。顔の周りは紙が余りまくっています。一方で、非対称な前脚パーツの配分による造形の破綻は起きなさそうなので、うまくいきそうという直感がありました。
ツノが大きく折り出せるので、題材をトナカイに決めました。
この試作を折ってみて、前脚が後ろ脚よりもだいぶ長く折り出されることに気づきました。図3の展開図と樹形図を見てみると、前脚(緑)の付け根に意図せず帯領域(薄緑)が発生していることが分かります。
前脚の長さは帯領域含め充分そうなので、後ろ脚を強化すべく後半身に領域を追加していきます。後ろ脚の長さが、帯領域を含めた前脚の長さと等しくなるように、後ろ脚の位置を設定していきます(図4)。この領域追加によって、ついでにツノの領域も増やせそうです。

後ろ脚の修正方針を決めたので、紙を折って手探りで拡張した部分の折り方を考えていきます。


図5の試作で、後半身の構造が決定しました。胴体の面がすっきりしていていい感じです。図5の試作は、後ろ脚だけでなくツノや顔の修正も進んだ段階です。後ろ脚の領域追加によって、ツノが豪華になりました。また、図3で耳だった部分をツノに充てました。
(図3の最初の試作から一気に変わってしまいましたが、この間の試行錯誤の履歴があまり残っていません…)
一通り整えた結果を、図6に示します。



脚は、蹄を折り出さない簡潔な仕上げにしています。脚の長さが蹄を折り出すには短すぎたというのもありますが、後ろ脚の22.5°が折り紙っぽくて良いと判断しました。本当は図4の領域追加幅を色々変えて検証すべきですが。
この時点で改善したい点として、以下の2点がありました。
- 耳が小さく、位置も前に寄りすぎている
- ツノが太すぎる
まず、耳の改善方法を考えます。
試作をいじっていたら、ツノの後ろに耳に使えそうな紙が余っていることに気づきました。そこで、図7に示すように耳の位置を変更しました。
耳が移動したことで顔周辺の紙に余裕が生まれたので、余計な線を減らしすっきりとした顔のデザインにすることができました。


次に、ツノの改善方法を考えます。
まず、図8の丸囲みで示した部分のツノの枝分かれが折りやすくなるように、図8の青く塗りつぶしたエリアの折り方を変更しました。

次に、図8の状態からツノの沈め折り幅を半分に細くすると、図9(a)のようになりました。ここで、図9(a)の青い丸で囲んだ部分に、2つの青矢印で示すズレが生じることが分かりました。このまま折ることもできますが、余計な厚みにつながりそうなので修正します。
このズレは、図9(b)の赤線のように折り筋を描き直すことによって解消されます。全体の折り筋を修正すると図9(c)のようになります。最終的に図9(d)のようになり、青い丸で囲んだ部分のズレが解消されたことが分かります。
このような作図メインの作業は、実際に紙を折るよりもOriedita上で試行錯誤したほうが効率が良いです。

完成です!


最終的な展開図は一見複雑そうに見えますが、図2で決めた単純な基本構造がそのまま残っていることが分かると思います。
前回の記事のラクダでは、デッサン的なことに触れてリアルな造形を目指していたくせに、今回は完全にアイデア主導の作品となり、あまり完成形のイメージを持たずに作ってしまいました。
胴体の造形は折り紙っぽいという意味では悪くないと思いますが、トナカイとしての特徴を盛り込めていないという意味では改善の余地があると思います。
展開図折りに関して、展開図を畳んだ時点でほとんど形が完成しているので、再現性は高いと思います。よかったら折ってみてください!






































































